2016年1月アーカイブ

事業の視点、投資の視点

 先日、銀行時代の先輩で、今は投資をやっておられる方を、知り合いのスタートアップの社長とお引き合わせをした。その先輩の投資戦略は超長期の投資を行う、というものであり、であるからして資金の性質も個人とかでは超長期には向かず、機関投資家の中でも年金等の資金をあずかって、厳選して長期に価値を生む起業の株式に投資をしてほとんど売却しない、という方針で運営されている。

 

紹介したスタートアップの事業は今をときめくシェアリングエコノミーの会社で、すでに数10億を調達して乗りに乗っているベンチャーであるが、上場などに目もくれずひたすら事業の拡大を目指しており、事業価値の桁替えを模索する中で単なるVCではない、より目線の高い資金提供者を探しているとのことだったので、ちょうどその先輩のことを思い出して、会食をセットしたものだった。

 

その中で、その先輩の一言にはっとすることがあった。「インターネットの業界というのは、急成長しているので、概して、自分たちの考える(超長期の)投資に向かない」という一言だ。未来を変える、とか、世界を良くする、とか、そういったことは、投資の世界では投資の成功による結果論にすぎない、とまではその先輩は言ってはいなかったけど、でも、自分としてはそう理解したし、とっても腑に落ちた。

 

事業の運営の中心にいると、解決すべき課題は、顧客のもつ課題であり、従業員のモチベーションであり、チャネル戦略であり、という目の前の諸々だ。そして確かに、解決されれば、付加価値が生まれ、売上が上がり、利益を生む。でも多くの、いや殆どの企業や事業は、自分たちでなくては成し得なかったか、ということ、そんなことはない。自分たちがやらなければ、他のプレイヤーが何らかの形で顧客の要求を満たしていたかもしれないし、顧客にしても、その会社から課題解決されなくても、まったく別の形で問題が解消することも多いだろう。多少の時間差はあっても。

 

人は、自分のやっていることに意義があるものだと思いたいものだし、それは経営者でも、従業員でも同じだろう。投資は、意義そのものは、中心課題ではない。そこに事業者と投資家の相容れない深い溝が横たわっているように思う。で、世の中の仕事人の大半は、事業家の描く夢に、励まされ、発奮し、自身の人生をそこに託しても悔いはない、と思いたいのだ。だから、投資視点は常にマイノリティだし、そうでなくては投資家はつとまらない。

 

そうした視点で見れば、インターネットのような急激に拡大するマーケットは、参入障壁は作りにくいし、また、成長性があるゆえに注目され、そこに過剰な流動性が生まれ、バブルを生む、という構造をもってしまう運命にある。参入障壁の構築よりも、先行者メリットのみで走り抜けることが事業運営上の要諦となる。

 

そのわずか数時間は、考え方をひっくり返される、刺激的な時間であった。そして、自身の事業を振り返り、何をしなくてはいけないのか、再確認できた大変有益な瞬間であった。

 



Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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