先端にいること、中心から遠ざかること

最近、刺激を受ける本を読むことが少なくなったなあ、と思っていたら、久しぶりに書店で面白い本を見つけたので、結構時間をかけてじっくり味わうように読んでいる。マッキンゼー出身の方がインタビュアーで、文系理系問わず、ある学問の領域のTOPの方数人が、その領域で今一番の「課題」は何で、それに対してどのようなアプローチで「解決」を図ろうとしているのか、ということを語っているものだ。

その学問というのは、

・発生生物学

・老年学

・銀河天文学

・中国哲学

・物性科学

・言語脳科学

の6つの分野だが、このほとんどに関して、一般的な意味で関心を持っていたこともあって、書店で見つけてすぐに購入し、今銀河天文学の途中まで読んだところだ。

 

この中で、最初に読んだ発生生物学の教授が言っていたことが、まさに「ああ、そういうことに惹かれていたのだな」と自分なりに感じるところがあった。彼が後に大発見をする研究分野があり、その研究分野は彼が大学で自分の研究分野をそこに定める意思決定をした際には、とうの昔に研究分野としては打ち捨てられた分野であった。50年ほども誰も研究することなく、新たな発見は何もなかったその分野に彼が取り組んでいた最中、しばしば「一人であてのない研究をしていて不安ではないですか?もしオーガナイザー物質(彼が後に発見した物質)が見つけられなかったらどうするんですか?」と聞かれた時、彼は「たとえ自分が見つけられなくても、かならず自分のあとの誰かが見つけてくれるし、研究を続けていればその人の発見の土台になる。それでいいと思っている」と答えた、と本書の中にあったとき、「ああ、これだなあ」と漠然と自分が求めるものに気付いたのだった。

 

以前のエントリーにも書いたことだけど、こうした一定の時間が、いや「長い時間」を必要とすることに、どうしても興味を持ってしまうのはなんでだろう、と思った時に、もうひとつ、自分なりに思いついたキーワードがあって、それは「先端にいること」であった。On the Edgeっていうと、僕の大好きな経営者の作ったベンチャー企業の名前である。先端に居続けて何かをすることは、その何かが現実に影響を及ぼすまでに時間が掛かることが多いのだ。場合によっては、自分の生きている間には行き着かないこともある。往々にしてある。じゃあ、なんでそんな場所にいて何かしているんだろう。

 

あるときに、先端にいることも、その世界が拡大するに連れて、どんどん中心部に近づいていく。さらにその先端部が中心からとても離れていると、あるときその先端が持つ「引力」のようなものが世界の形を変えてしまったとき、世界はいびつな形をしているのだけど、でもいつの間にかそれが世界の形として定着する。そして、いつのまにか中心だったところから徐々にずれていって、新たな中心部が出来上がる。このイメージは、世界がもつダイナミズムが「先端」=「はじっこ」のエネルギーに依存しているイメージと合致するという意味でも、自分の中でしっくりくる。

 

世界の中心にいることは、とても安心感があるし、そこで自分のエネルギーを投下して、リターンを得ることは比較的短い時間でできる。でも、先端=はじっこで何かをやろうとするときには、長い時間がかかる。というか、そもそもそこからリターンがあるかどうか、やっている当人に確信がないことも多い。世界の中心は時間とともに移ろうし、それによってはじっこは中心に寄ることもあるし、以前は中心に近かったはずの場所がいつの間にか先端に近くなったりもする。

 

通常は、中心にいることに動機は問われない。むしろ、それを社会が奨励することが多い。でも、世界の端っこにいることには、動機というか、衝動というか、とにかく、普通じゃない何かを必要とする。そしてその先端にいる人達が、世界を変える。中心にいる人達がしているのは、制御である。そんな、動機や衝動で動いている「手に負えない危険な」人たちから社会の多数派である「秩序の安定を求める」人を守ってあげることである。でも、ここで面白いのは、そのような先端にいる人達が、中心にいる人達のサポートのお陰で、先端にい続けることができる、というパラドックスだ。

 

現代は、ビジネスというのは比較的世界の中心に近いところに居場所を定めている。一方、学問や芸術は以前ほど世界の中心にはいないような気がする。中心は変わる。今行きている僕らが思いもしないような中心が、50年後、100年後、あるいはもっと先に、世界に現れているかもしれない。その世界のヒントは常に「先端」にあるし、だから、先端を見つけるといつも心が湧きたち、生きることの意味や目的なんてものを問わなくてもいいんだって確信できる。



Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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