2011年8月アーカイブ

世界の裂け目

昔のファミコンとかで、隠しコマンドみたいなものがあって、タイトル画面中にコントローラのボタンをいくつか押すと無敵になったり、装備が完璧な形でスタートできたりした記憶がある。今のパソコンでも、何か、エンジニアの人だけがいじれる黒っぽい画面があり、通常の使い方をしていると接する機会がないけれども、故障したり特別な処理を行わなければいけない時にだけ行う処理がある。

 

以前勤務していた会社で、ひょんなことから特命案件を担当することとなり、その案件の性質から警察や検察官と直接やり取りをすることがあった。ことの性質上、あまり内容を詳らかにすることはできないのだけど、その時に接した検察官の優秀さとその事案の思いもかけない結末から、国の基本的な骨格を形作っている「三権分立」を担っている人材の圧倒的なレベル感と、出来の悪い小説のエンディングみたいな事案の結末にアンマッチを感じたものだった。

 

今回の震災直後の1週間ほどに感じた、自分が確固たるものだと思って立っていた地面が崩れていくようなあの感じも、今思うと上記の2つの例と似ている。ことのレベルはどうあれ、「世界の裂け目」を覗いてしまったような、そんな感じ。たとえば、このブログを書いている今の状態は、通常はブラウザやワードなどのアプリケーション上で全てが完結する。でも、そのアプリが調子悪くなったときには、まずこのアプリのQ&Aで解決しようとして、さらにそのアプリが動いているOSの状態を確認する。でも、いきなりPCの画面がブラックアウトして、電源スイッチを入れても動かなくなったりすればもはやOSレベルでは解決できない状態になったりする。

 

そういった、アプリとOS、もしくはPCのメモリとかCPUとかの「階層」みたいなものを今の社会システムに当てはめてみると、相当にアプリが高度化していて、普通はOSとかに直接する機会が少ないような社会なんだろうと思う。表面上のユーザビリティは大変使いやすく、生きやすい社会システムになっているから、ちょっとした故障とかだと、たいていはアプリの段階で解決してしまう。だからユーザーはOSの存在をあまり感じることなく日常生活を過ごすことができる。でも、ごくまれにこのシステムにもエラーが起こる。

 

一番最初のファミコンの例は、そのシステムを設計した人が、故意に作りこんだ「裂け目」だが、偶然誰かがそれを見つけてしまって、その裂け目を使うとゲームの本来のルールや構造(小さなゴールをクリアするために上達し、さらに次のゴールをクリアするために上達しようと頑張ること)そのものを無力化するという事象だ。特命案件の事案は、最終的には国家というシステムが最終手段としてもつ暴力装置の発動を垣間見た事案だし、震災自体は天災なのでシステムではないけど、その後におこった原発をめぐる一連の出来事は、通常は経験することがない(地震が起きなかったら、半永久的に経験し得なかった)今の社会がもつ高度なシステムを支えるOSの故障そのものだと思う。

 

震災直後の当ブログにも書いたことだけれども、こうした裂け目がどこにあるのか、ということを知らないでいることは、個人的には気持ち悪くて仕方ない。知ってどうなるものでもないという意見があるのは承知の上で、好みの問題として、知りたいと思う。というか、どんどん使いやすくなったアプリの上で、如何にうまくそのゲームをやるか、ということにますます興味がなくなってきている。それより、そのアプリを動かしているOSを、あるいはそのOSを動かしている部品そのものを、どうにかして理解したい、という気持ちが強い。

 

世界を動かしているシステムに時に生じるエラー。そのエラーが垣間見せる世界の裂け目。そこには、今の世界が成り立つ前の、原始的な構造の残滓があり、自分が依って立つ地平が如何に脆弱なものであるかということを再認識させてくれる。



Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

2016年2月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29          

カテゴリ

最近のブログ記事

Powered by Movable Type 4.22-ja