2010年11月アーカイブ

見えているものが違う

先日、弊社オフィスで「若手次世代経営者の会」を行った。これは、我々がクライアントからオーダーを受けている「事業を経営する素質のある30代前後の若手を獲得したい」というニーズをいただき活動する中で、お会いした多くの候補者から「自分と同じ年代の、異業界で頑張っている人との横のつながりを作ってもらえたら」という声があり、それを試験的に実現させてみたものだ。ここで、筆者が常日頃思っていることが如実に表れることがあったので、今日はそのエピソードをお話ししたいと思う。

その会に集まったのは、3名の30歳前後の方々。いずれも新卒で入った会社でバリバリ働き、評価されていることが経歴からもにじみ出ている人たちだ。Aさんは、繊維関係の商社で、大手のアパレルメーカーにファッションの提案をする営業の仕事をしており、その商社の最重要顧客を任されている。Bさんは外資系のITの大企業。そこは優秀な人材輩出企業としても有名だ。Cさんは、大手メガバンク出身。今は出向で政府系金融機関にて国際金融部門で活躍している。

Aさんが「ぼくが一番うれしいときっていうのは、自分が提案した服を着ている人を街で見かけたときですね」と言って、その場にいた弊社のアシスタントの服をみて「気になるんですよね~、どういう組み合わせにしているのかとかって」とつぶやく。まさに、消費者の購買行動に直結している仕事をしている人の特徴である。BtoCのAさんに対して、Bさんの仕事は、完全なBtoBだ。さらに言えば、Cさんは消費者の購買行動からもっとも遠い金融の領域を仕事にしている。

Bさんは「自分が大きなプロジェクトを指揮して、無事にそれをやり遂げたときに充実感を感じる」という。でもAさんには「ITのシステムって一体いくらなんですか?」という質問が出る。Aさんのビジネスは、原価に適正利潤を加えて、競合より魅力的な=消費者に購買行動を起こさせる商品を、最終的には消費者に売ることで成り立つ。Bさんの売るITシステムは、消費者に直結しないが、最終的には企業活動を通じて生活者によりよい商品やサービスをより安く提供するのに役立つ。

Cさんは、さらにその企業活動そのものを支える仕組みだ。BtoB的な企業への融資、ということになれば、本当に消費者は遠くなる。でも、あらゆる企業において、事業を進めていくのに資金をどのように調達するのかは重要な課題であり、その意味では、金融はまさにあらゆる商品・サービスにあまねく影響し、その存在を支えているといっても過言ではない。Aさんからすると、Cさんの仕事の意味というのは、ますますわかりにくい。というか、理解はできても、体感として実感できないものだろう。

僕自身、最初は金融からスタートし、ゲーム関連のベンチャーを経て、人材会社に入り、最近はアパレルの経営に少し関与するという経験をしたから思うのだけど、人って、同じシーンに身を置いていても、見えているものが違うことってよくあるんじゃないかと思う。Aさんが、街を歩いているときに見ているのは、通行人の服だろう。でもBさんは、同じシーンでは服なんかまったく興味がなくて、抱えているプロジェクトのことしか考えていないかもしれない。Cさんはまた別のものを見ているかもしれない。

同じ年代の人間でも違うのならば、違う年代や、国籍や文化が違えばなおさら、見えているものは違うだろう。同じ職場でも、部下と上司では本当に見ているものが違う。そう考えると、自分と違う世界の見え方をしている人と話をして、その人の見え方を理解すると、同じ時間や空間が2倍にも3倍にも価値を増してくるような気がする。そして、年齢を重ねてまた見えるものが違うとしたら、とりあえず生きている意味の一つはそこにある気がする。


Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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