2010年8月アーカイブ

大卒の就職状況

私が大学を卒業したのは1995年なのでちょうど15年程前ということになるだろう。世の中はバブルが崩壊したということで、そのころは就職氷河期とか、自分たちのころは本当に最悪だとか言われていたものだった。でも、振り返ってみると、あのころはまだまだ良かった、というのが現実だ。その後、97,8年には銀行を中心に破綻企業が相次ぎ、日本経済そのものがお先真っ暗に感じられたものだった。そして、そのころの新卒にはすでに日本の大企業に対する幻想は消えさり、「結局自分でなんとかするしかないんだろ?」という人たちが起業したり、海外に個人として出て行ったり、新卒というくくりに当てはまらない、自立した個人が出て来た時期でもあった。ベンチャー企業が彼らを吸収してくれていた側面もあった(起業も含めて)。

その後、2002年にはベンチャーブームが一息つき、ITバブル崩壊などといわれたが、一方新興企業と北米の復調を糧として日本の製造業が息を吹き返し、その勢いを買って、他の重厚長大系の企業群も復活し始めた。そしてリーマン前までは、「やっぱり日本は製造業だよね」という雰囲気の中、新卒の企業好感度ランキングも90年代かと見まがうような顔ぶれとなっていた。その間、産業再生機構が立ち上がったり、日本の産業構造を変えていこうとする動きがいくつか見られたけれども、結局大きな波とはならずに、新しい皮をかぶった旧来型の企業が発言権を持つという構造が温存され、それに依存した政治や官僚組織は、そのまま生き残ることになった。

その間に、日本の大企業は「やはり新卒の採用は定期的にやっていかないと」とばかり、以前からの新卒採用の方式をそのまま踏襲した形で採用を開始したけど、2009年のリーマン後には、再び新卒採用の数を大きく縮小させるという事態となった。ここに来て、学生側もよくわかったのだろう。「もう以前のような、新卒大量採用、年功序列、終身雇用の仕組みは一部の希少な企業を除いてありえないのだ」、と。だから、今回の報道にあるように、新卒は2割が就職しない、ということになり、自分の身を自分で守る方法を模索し始めている。

90年代半ばにおきた就職氷河期との大きな違いは、その選択を行っている学生のうち、いわゆる「優秀層」と呼ばれるゾーンにまで広がって、かつ、その割合が著しく上昇していることにある。本来の日本の大学(特に文系)は、旧帝国大学と一部私立大学の成績優秀層を、日本の産業システム(行政+企業幹部)の中枢につつがなく送り込むことが最重要ミッションであった。それが日本の競争力の源泉であった。今、各企業のTOPが憂いているのは、量の問題ではなく質の問題なのだ。

そのような状況の中で、アジアの優秀な人材が、日本の経済資産を目当てに、熾烈な競争を勝ち抜いて企業経営の現場に参入してきている。最近、企業幹部の方と話していても、「中国の若者のほうがアグレッシブで、かつ、能力が優秀だ」ということを頻繁に口にする。実際そうなんだろうと思う。日本語を話す、ということ以外にアドバンテージを持たない人材を採用し続ける理由は、企業の側にはない。

6月末時点での世界の企業時価総額ランキングにおいて、中国の企業がトップ10のうち4社を占めた。一方、日本企業は20位にすら入れない。わずか20年強前には、日本企業がベスト10のうち、8社を占めていた事実はいまや何かの冗談のように思える。同じように、これからの10年先はまたまたまったく予想がつかない。だから、今の構造を前提としながら、常に環境や自己認知に修整を施しつつ、前に進んでいくほかないのだ。だから、新卒の皆さんも、ぜひ自分の頭で考えて行動してほしい。親の世代の言うことのうち、経済や企業に関する常識は、上述のような「冗談みたいな世界」観から形作られていることが多い。意見として耳を傾けながらも、自分なりの仮説と覚悟を持って、社会に出る際の「最初の選択」を悔いのないように行ってほしいと思う。


Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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