2010年6月アーカイブ

産業構造ビジョン

先日、経産省より発表された「産業構造ビジョン2010」という資料にに目を通した。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100601aj.html

施策の実現具体性は別として、現状分析としてはとてもよくまとまっていた。印象に残ったことは、こんな感じ。

・一人当たりGDP:3位(00年)→23位(08年)
・2000年-2009年:経常利益増のうち3分の1強がグローバル製造四業種(自動車、電機、機械等)。GDP増分の半分は自動車関連
・世界市場の伸びに伴い、日本製品のシェアが急速に縮小。(液晶パネルのシェア:100%(95年)→10%(05年))(DVDプレーヤーのシェア:95%(97年)→20%(06年))

とくに、appleの主力商品である、ipodとipadの部品に占める日本製品のシェアの図はとても面白かった。
2005年製のipodはその製造部品コストのうち68%を日本の電気部品が占めていたのに対して、先日発売のipadにおける同シェアは20%をきっている、というものだ。3分の2を占めていたのが、5分の1以下になった。全世界でこれだけ話題になっていつコンシューマ製品で、5年間の間にここまで劇的な変化、シェアの現象が起こっていることは、なかなか我々消費者にはわかりにくい。上記の液晶パネルやDVDプレイヤー、カーナビなど、多くの製品がこの10年間に大幅にシェアを落としている。

あとから振り返ると、この2009年、2010年は、良くも悪くも日本にとってターニングポイントになる年になるのだろう。この50年間、世界は新自由主義の旗印の下、一貫して市場開放と規制緩和を進めることによって成長を維持してきた。その恩恵をもっとも受けたのが、日本であった、ということだろう。いま、世界はその方向性の修正(規律ある市場と政府による一定のコントロール)と、成長セクターが先進国から新興国へというパラダイムチェンジの二つの大きな潮流の中にいる。そこで日本が「何で稼ぎ、何で雇用するか」ということが本報告の大きなテーマだが、その提言はまだ漠然としている。

首相が一年ごとに変わり、本質的な変化をTOPダウンで行えない国の形がどうなっていくのか、というのは、実験テーマとしてはとても面白い。もともと政治主導の国ではなかったので、今のところ、TOPがだれでもあまり何も変わらない、という意味では、この国は柳のような強さを持っているのかもしれない。それは、結局敗戦後に誰かが、こうした世界の変化の方向性を想定して、この国の形を設計したということかもしれない。

でもでも、結局、人間万事塞翁が馬、何が幸いするかわからない。年初に弊社で「今年のテーマ」というのを色紙に書き入れたのだけど、僕が書いたのは「適者生存」。我々にできるのは、変化を読みきることではなくて、変化に対応することだけなのだ。10年前、まだ世界は9.11を経験していなくて、米国が主導する繁栄はずっとつづくのだと思っていたし、euroの成立は世紀の実験の成功だと賞賛されていた。結局、我々は、今後どうなるのかなんて、何もわからないのだ。予測の精度は後講釈でしか計れない。

で、結局、いつもの結論で、個人ができることは、自分自身の行動に関して意思決定をすることだけだ。アジアの世紀になると思うなら、自分を取り巻く環境においてアジアの関与度合いを意識して高めればいい。もっと単純に言えば、上海に引っ越せばいい。アジア企業(あるいはアジアにビジネスの中心を移そうとしている企業)に転職すればいい。それらはすべて意思決定の問題だ。でも、アジアの時代に本当になるのか、ってのはわからない。あらゆる事象の不確実性は増しているのだから。

言いたいのは、日本が、これからどうなるか、ということと、自分がこれからどうするのか、ということには直接の関係性は薄くて、今後ますます薄くなっていくだろう、ということ。だから、「日本の将来は真っ暗だ」とか「政治の貧困が・・・」とか言っている間に、数多くの意思決定を行って、個人として適応しながらやりたいことややるべきことへ向かっていけばいい、と思う。


Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

2016年2月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29          

カテゴリ

最近のブログ記事

Powered by Movable Type 4.22-ja