2010年4月アーカイブ

東京への集中と地方復権とアジア

東京の人口は増えている、というニュースが最近あったけど、それより少し前にブログで世界最大の都市圏は東京で、それはこれから20年ほどは変わらない、という記事があった。何でも都市圏としての東京(近隣の諸県を含む)は3000万人以上の人口を抱えていて、2位以下を大きく引き離して圧倒的な1位だそうな。確かに、通勤をしていても電車のダイヤはより密度を高めているにもかかわらず、混雑は緩和されている実感はない。

一方、日本の人口はすでに減りはじめており、かつ世界でも屈指の長寿国となっている事実とあわせて、とんでもないスピードで高齢化を迎えているという事実がある。ってことは、地方は(東京に住む)我々が思っている以上の勢いで人口を減らしているのだろう。実際の仕事でこれを実感している人の話を聞いたりする機会も多く、実際に足を運びたいと思うけど、でもそんな機会が無い。機会が無いことが、また地方の疲弊を間接的に語っているような気もする。

そもそも、1億人を超える人口を抱える国はそれほど多くは無いが、その中で日本は国土が狭いランキング上位は間違いないだろう。とすると、そこで「地方過疎」といっても、他の国の国土比における「過疎」の度合いからすると、むしろ緊密なほどに中央と結びついていて、過疎でもなんでもない、って話になるのかもしれない。それを実現したのは、田中角栄が作った高速道路網を中心とする改造後の日本だったのだろう。

物理的に緊密に結びついた中央と地方は、これまた急激に進んだブロードバンド化によって、情報という意味でもがっちりと包囲網を完成させたのだとすれば、これがある意味で理想とする国家の出現なのかもしれない。経済的な価値の殆どは中央で創出し、地方はその分け前を税金の再配分という形で受け取る。地方を自立させるよりは、いっそう東京への集中化を高めて、グローバル、あるいはアジアにおける優位な位置づけを確保する基盤とする、というのは、結構夢物語ではなく、取りうる選択肢の一つではないかと思う。

私が生まれた北海道は、以前コラムに書いたオーストラリアのスキーブームに加え、アジア・中国の富裕層向けリゾート別荘開発ブームに沸いているらしい。内需が伸びない(人口が減るんだから伸びようが無い)国の生き残りは、そうした近隣の需要をどんな形で取り込むか、ということにかかっている。メーカーは生産拠点をより人件費の安い国へ移転するだろうから、個人消費やサービスを高度化する、あるいは、「売れるもの」に転換する必要があるのかもしれない。そのサービス開発を東京で行う、ということになるのかな?

まだ考えはまとまらないけど、でもこの「東京集中」と「日本の人口減少」のアンバランスは、意外に面白い解を生み出すのかもしれない、と思っている。

安楽いす探偵と想像力

年末帰省するときには、いつも各出版社が出す「今年のベストミステリ本」を買い、そのうち上位の作品を数冊買い込んで、正月の暇な時間を埋めることにしている。一言にミステリといっても色々なジャンルがあるが、個人的には古典的な部類のものが好きだ。そのうちでも「名探偵モノ」は特に多くの名作を生み出してきたが、その中で「安楽いす探偵(アームチェアディテクティブ)と呼ばれるものがある。

安楽いす探偵とは、自分自身は事件の現場にいかないで、安楽いすに座ってひたすら話を聞き、推理を働かせて事件を解決するタイプの探偵だ。まあ、別に安楽いすでなくてもいいのだけど、とにかく、自分で現場に足を運ぶのでなく、完全に人からの又聞きによって事件を解決する、ということだ。彼にかかると「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」というセリフは、「解決は現場なんか行かなくてもできますけど、何か?」ってことになる。

安楽いす探偵にとって重要な能力のひとつは、想像力だろう。自分では直接経験していない場所や、時間、人の行為などを実際に経験した人から聞き出すことで、その人も気づいていないような事実などがパズルのピースのように組み合わさって当初解決不可能に見えた事件が見事に解決する。でも、その想像力とは、結局のところ経験の量を分析・整理し、演繹と帰納を駆使して脳内に溜め込んだ「データ」を参照して結論を出す行為のことを言うのだと思う。

同じ時間・同じ場所にいれば、想像力発揮のための経験という「データ」も同じように溜め込まれるのかというと、そうではない。そのデータのインプットの際に、さまざまな「タグ付け」なり、「整理・分類」を行いながらデータを蓄積しないと、適切な参照を行うことはできない。このタグ付け、整理分析を、経験データインプットの際に行えるかどうか、というのが、「観察力」になる。想像力は、上記の観察力や、記憶力に裏打ちされていなければならない。

安楽いす探偵が解決のための糸口を対話者から引き出すためにする質問のうち、小説的にももっとも面白いのが「不存在の理由」を問うものじゃないかと個人的には思う。たとえば、「なぜ、***をしたのか?」ではなく、「なぜ、***をしなかったのか?」という質問や、「***はあったか?」ではなく「***はなかったのか?」という質問が「不存在の理由」を問う質問である。これこそ、観察に基づく膨大な経験データに裏打ちされた想像力なくしては出てこない質問だろう。

我々の仕事は、まさに安楽いす探偵に似ている。クライアントは最終的には、人材探索を依頼してくるのだけど、経営人材を探索依頼する背景にはかならず経営課題と人事・組織の問題意識があるはずで、それを我々は想像力をはたかせて、かつ効率的な質問によってクライアント自身すら気づいていないことまでも明らかにしていく。

キャンディデートと会話するときも同じだ。キャンディデートは自分がやってきたことを話す。しかし、実はそのキャンディデートの本質は「行った行為」ではなく、「行わなかった行為」とその理由にあることがしばしばある。そのときに、「なぜ、***をしなかったのですか?もし、私があなたの立場なら、まず***をしていたと思うのですが」という質問ができるかどうかは、そのキャンディデートの本質を理解するうえで大変有効だ。

我々は、実際に仕事の現場を「経験」することはできない。クライアントの仕事の現場もそうだし、キャンディデートの仕事の現場もそうだ。でも、安楽いす探偵のような想像力を働かせて、会話を重ねていくことで、100%の理解ではなくとも、少しでも「本質」に近づいていきたいと思う。


Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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