2009年6月アーカイブ

日本の形態

少し株価が持ち直してはいるけれど、個人消費の落ち込みはこれからが本番だっていう身も蓋もない話をしようかと思ったけど、それじゃあ悲観論ばっかりで、似非インテリみたいだなと思ってやめた。
こういう極端な状況の時には、きちんと基本的な数字から追ってみようと思って、ネットからいくつかの数字を取り出してきて眺めていて思ったこと。

1.今年2009年に、GDPで中国に越される
日本は、95年から2008年までずっとGDP500兆円前後。一方、米国は同じ期間に700兆円くらいから1400兆円へ拡大している。他の欧州各国も2000年から2007年までの間に1.5倍程度伸ばしている。この「一人負け」状態を指して「失われた10年」と言っている。で、びっくりするのが、中国。軒並みいつのまにか400兆円を超えている。
でも、中国ってWTO加盟が2001年で、そのころってまだGDP100兆円強くらいで、順位も5番目以下だったのに、2008年にドイツを抜き、400兆円強に。ということはなんと4倍!ごぼう抜き。成長率で見ても、1-3月期の日本は15%のマイナス(金額だと▲70兆円)で、中国は8%維持するなら30兆円でまさに逆転!っていう話。

2.個人消費の落ち込みはこれから
そのGDPの6割を占めるのが個人消費。2008年の夏冬ボーナスも昨年比減だったが、その幅は1%いくかいかないか、という感じだった。先日でた夏のボーナスの妥結状況では、なんと20%もの減少であり、減少率として過去最悪だった6.7%という数字の3倍もの規模で減少する。そもそも、企業業績が好調でも個人の財布にはあまり配分されない国だから、この20%という数字は、生活給の一部である賞与を大幅に削減するということを意味する。最近見られる好調な数字は生産にかかわるものや設備投
資にかかわるものであり、その改善は確かに明るい兆しではあるが、GDPの6割を占める個人消費への打撃はまさにこれから本格化する。いま好調に見えるコンシューマー向けの企業も今年後半から徐々に打撃を受け始めるのではないだろうか。

3.これからの展開
バブル崩壊の時に、家計の所得の平均は94年まで上がり続けた。それは、過去の日本の蓄積が政府や企業に多くされていて、それを取り崩すことができたからだろう。でも、今や企業にはそんな余力はない。中小企業で製造業は今回の不景気でかなりの痛手を受けているし、サービス業は個人消費が落ち込めばかなり厳しくなるだろう。大企業はというと、いま必死になってキャッシュポジションを高めているが、それは自らが不景気に耐えて次のトレンドに移るまでのブリッジファイナスにすぎない。雇用者へ金を回すなんて無理。政府はいよいよ税収と同額の国債を発行して天下のばらまき政策を行っているけど、これも個人の金融資産1500兆円という多額の資金が巡り巡って日本の国債を買うというファイナスに依存してのこと。GDP世界第2位という地位は、世界最大の消費国である米国にファイナンスし続けていたから成り立っていて、自国のファイナンス(国債の発行)に余剰部分があったから米国債を買っていたわけだけど、もうそれは難しくなったってのが現実だろうな。象徴的には米国債の最大保有国の座を昨年9月に中国に譲っていることもあげられる。とすると、以下のような展開かな。

・日本のサラリーマンの大多数が、初めて自分の財布にキャッシュがない、という状況を経験する
・劇的な「需要の減少」が起こる。すなわち、「よりいいものを安く」ではなく「金がないから買わない」という行動がマジョリティになる。
・今日本で「不況型好調企業」と言われている企業群も、今年の年末くらいから昨年対比で収益を減らし始める。
・一方、中国にものを売っている企業(コンシューマーであれ、BtoBであれ)は年後半から少し良くなっていき、商売の中国への依存度を高めていく。
・日本は、「環境・エネルギーのコア技術を持った国=特許と研究」「アジアの高級ショッピングモール=購買経験の高度な提供」という印象の国となる。
・ただ、自分の国のファイナンスができなくなるので、中国にお金を借りるようになる(中国が日本の国債を買う)。
・中国の目的は、米国と違い(米国は世界最大の消費地へのファイアンンス)、「技術と娯楽の獲得」になる。

4.個人の選択
人口1億人を超える国の中で、日本ほど国土の狭い国はない。島国であり、言語も独自性が高い。この地理的な特性と、技術が爆発的に発展した20世紀というタイミングが、今僕らの置かれている状況をもたらした。言語へのこだわりが強いがゆえに教育水準が高く、地理的に密集している(東京の集中度は驚くほど)のでお互いの知恵やアイディアを共有して高めていくのに向いている。技術製品の良さは、言葉がなくとも通じるから、日本は世界一の「製品開発国」だったんだろうし、日本の工業製品が世界中に広まった。でも、インターネットなどにより情報共有が容易になった世界で今までの日本の優位性は維持できない。今まで何人もの識者たちが「これからはグローバル化だ。競争相手は世界なんだ」とか言いながら、メーカーが海外で稼いできたお金のおこぼれをもらうことで国内だけを見ていれば十分に潤う状況だった。だから、別に海外と戦うのは、一部の技術力の高いメーカーだけでよかったし、金融とかサービス、投資とかで戦おうと思って大敗した80年代後半のトラウマがあるからなおさら国内にひきこもる。そうなっている理由は、要はそういう国の形態(デザイン)だったからだ。それはもう持たなくなった。人口1億人を超えた大国でGDP対比でもっとも国家予算が大きい国であった日本は、もはやその国家予算を税収で賄いきれなくなり、国債を発行し、それによって米国債の購入余力がなくなり、そうなれば、米国という覇権国の傘下で享受していたもろもろの便益もなくなる。それでも1500兆円がなくなるまではしばらくもつだろう。でも実質的にその1500兆円は国債というもので運用している限り、実質的な価値はどこまで残っているだろう。

そんな状況で企業も個人も選択は2つくらいかなと思っている。一つは、このまま日本に残って残存者利益を獲得するか、もしくは技術と娯楽(購買行動含む)の提供者として覇権国(米国か中国か、まあ欧州?)からのオーダーのもとで価値を提供していくこと。もう一つは、言語と地理の限界を超える意思を持って、変化の激しい場所へ身を投ずること。どちらもメリットとデメリットがある。選択するのは自分だ。


Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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