2008年10月アーカイブ


読書の快楽

先日のコラムで、最近読書に没頭できないというようなことを書いたが、先日久しぶりに没頭できる作品に出会った。「のぼうの城」というのがタイトル。最後の数十ページは、地下鉄をおりてからもしばらく読みふけるためにベンチに座って読み続けた。
内容としては、いかにも日本人が好みそうな構成ではある。日ごろ馬鹿にされていた武将(リーダー)が、いざという危機の時に皆の心を一つにまとめていき、最後には不可能と思えたことを実現してしまう、というプロジェクトX的な話だ。

登場人物の中に石田光成がいるのだけど、彼の存在がきわめて効果的だ。自分にとって一番感情移入できるのは、彼のような人物である。
秀吉はそのころほとんど天下を平定しつつあり、消化ゲームのような戦が続く中で、光成だけが「先の見えたゲームなどつまらん。どこかに自分を楽しませてくれるような突拍子もない人物はいないか?」と考えている。彼にとって武功も権勢も興味がない。ただ、面白いゲーム、わくわくさせてくれる瞬間を求めている。

そこに成田長親が出てくる。「でくのぼう」の「でく」を省いた「のぼう」という、親しみなのか軽蔑なのかわからないあだ名で呼ばれるこのリーダーが、自分以外のすべての幕僚たちが「降伏やむなし」と覚悟する中、最後の最後になって敵の武将の前で突然「戦います」と返答する。
その理由が「力のある者が力のない者を足蹴にし、頭のいい人間ががそうでない者の鼻面をいいように引き回すような、そんな世の中はいやだ」と。周りが「領民のために我慢してくれ」といっても、きかない。でも、領民も他の武将も本当は無条件の幸福など望んでいなかったのだ。決戦をのぼうが決意したから、皆が奮い立つ。

最後の最後、のぼうと光成が相まみえるシーンがあるが、勝利したのは光成であるにも関わらず、まるで光成はあこがれの人に会いに行くかのような心持でのぼうを尋ねる。
この戦いの結末が、光成の勲功という意味では大きなマイナスであるにも関わらず、「こんな戦を先導した武将とはいったいどんな人物であろう」と胸をときめかす。「こんな面白いゲームをさせてくれる相手がまだいたのだ!」という喜び。

まあ、月並みにここでリーダー論をぶってもいいのだけど、あまりにもストーリーとして面白いこの小説に失礼であるような気がするので、やめておく。一読をお勧めします。

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Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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