2007年11月アーカイブ

世界の認識の仕方

今日朝、ニュースを見ていて、子供を亡くした父親のコメントを聞いて、いきなり涙腺が爆発した。そういえば先日は、日経新聞を電車で読んでいて泣けてきて仕方がなかった。一方、外を歩いているとき、ふと何かを見て感動したことはない。例えば、きれいにデザインされたグラフィックポスターも、工事現場のついたてに書いてある子供と森の絵も、ほとんど何も心を動かさないし、覚えていない。下手をすると、今朝の天気がどんなだったかも覚えていないし、ましてや近くの家の軒に金木犀が咲いているということも、10中8,9気づかないと思う。

とある広告代理店から、クリエイティブディレクターをハンティングしてほしいという依頼を受けたとき、最初は「ああ、(自分の専門である)金融からもっとも遠い領域だなあ」と思ったものだった。クリエイティブとは何か、ということを、先方のクリエイティブ担当の役員から直接聞かされたときは、言葉になっているから何となく分かったような気がした。今から考えると彼のような人間から聞ける「クリエイティブの本質について」のマンツーマンの講義は、相当な価値のあるものだったと思う。事実、その後私の一つの関心領域は「クリエイティブ」になったくらいだ。

そのプロジェクトは、大変面白いプロジェクトで、その役員は、自前でのクリエイター育成では今後のワールドワイドでの競争を勝ち抜いていくのに限界があると感じており、一気に「外国人のTOPクリエイター」を引き抜いてこようと目論んだのだ。そこで、彼と打ち合わせながら、ロングリスト(潜在的候補者リスト)を作成し、数人に絞り込んだ上で、コンタクトを始めた。その候補者達とのコミュニケーションを通じて「ああ、クリエイティブとはこういうことをいうのか」ということを、作品ではなく、作り出したその人を通じて感じることができた。

僕が感じたことは「この人たちは、たぶん僕の世界の認識とはまったく別の認識の仕方をしているに違いない」ということだ。上の例で言えば、クリエイティブな人たちは、町中にあふれるグラフィックやデザインの中で、明らかに「光るもの」と「そうでないもの」とを見分けているだろう。いや、どんな平凡な風景だろうと、そこにある色彩や明暗、形、などを、僕とはまったく違う見方で捉えていて、何かをそこから感じているんだろう、と思った。例えばトマトを見たときに、僕は言葉としての「トマト」以外に感じることはないが、クリエイティブな人は「圧倒的な赤褐色」や「生命感あふれる質感」をビビッドに感じるのではないか、と思ったのだ。

そのように考えると、世界を認識する方法・仕方は、実は自分が思っているよりもバリュエーション豊かなのかもしれないと思いついた。
・数字で世界を認識する数学者や物理学者
・音楽で世界を認識する作曲家や声楽家
・においや味で世界を認識する料理人やソムリエ
・運動で世界を認識するアスリート
・お金で世界を認識する金融家
特にどの分野でもTOPに立つ人間は、よりそれを先鋭的に感じているのではないだろうか?
僕自身は、ファッションに無頓着だし、車や時計などへの愛着もほとんどない。しかし、世界を「それ」で捉えている人たちにとってみれば、「それ」こそが生きる意味であり、世界そのものである、というようなこともあるのだろう。

この世の中には本当に色々な職業があり、それぞれの職業に特有の「認識の仕方」というものがある。ヘッドハンティング、サーチという仕事の醍醐味はそういった人たちと交流することを通じて、世界を豊かに認識し直すことにあるのではないか、と思う。

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意味ある何か

自分にとって限りあるこの人生を送るのに最も意味ある何か、というものがあるとしたらそれは一体どのようなものだろうか、ということが一貫した自分自身のテーマ設定だ。自分というものが、まったく代替性のない特殊な存在であることは、この議論の前提である。「人それぞれ違う」というのは当たり前だ、ということだ。切り口はいろいろあると思う。

・外的な何かを求めるタイプ VS 内的な何かを求めるタイプ
・目的の達成が大切だと思うタイプ VS 瞬間の満足が重要だと思うタイプ
・文系 VS 理系  
などなど…

もともと、社会的に意義ある何か、というテーマはとても分かりやすく、そこからの変形として、人に役立つこと、あるいはさらに進んで、人に喜んでもらえること、というようなテーマになると、もはやあまりにも反論不可能な外観を備えているので、自分の人生の意味もそこにあるんだろう、と、社会人になる前は思っていた。就職活動でも、普通にそういった話をしていたと思うし、その前提の上に「だから、御社に入社したいのです」という結論に繋げるためのロジックをいくつも作り上げて、そのうちいくつかはパターン化したので、それはテンプレートとして保存していたものだった(冗談です)。

しかし、結局今となっては、そのころ考えたロジックは無駄とは言わないが、自分という存在にとっては本質ではなかったと気づかされた。かといって、今すでに「本質をつかんだ」というわけではないのだが。社会のためであるとか、人=自分以外の他人=特定ではない大多数の他人の総称、のために「限りある人生の大半を費やしたい」と思っているという人々のうち、その人のオリジナルとして、本当にそれがその人の「本質」であると確信できる人がどれほどいるのだろうか?

いや、結構多くの人が、そのような考えや傾向を持っているものだと思うし、それ自体はそれこそ「社会にとって」とても好ましい状況だと思う。しかし、そのうちのかなりの割合の人が、「本当はそういう志向性ではないのに、幼少のころからそれが当たり前だと教えられ、それを疑うことなく自分の本当の思いだと思い込み、それを疑うことなく今に至っている」可能性は、かなりあると思う。

念のため付け加えるが、決してそれが「良い」とか「悪い」とかいうつもりはない。
ただ、「自分固有の(人生の)意味」というのは、注意深くそれを考えていないと、特に日本の社会では、すぐさま「社会の要請と合致」させるように考えがちである。
もちろん、注意深く考えた上で、それが結果として社会の要請と合致している状況というのはその個人にとっても、社会にとっても、もっとも好ましい状況であろう。

自分で考えること。その上で自分で選び取ること。とりあえず、現在の仮説として、それが「意味ある何か」に繋がっていると考えている。

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買収ファンドと経営人材

10月25日、NYSEに上場したばかりのThe Blackstone Group(以下ブラックストーン)が日本に法人を設立し、本格的に日本市場に進出してくると報道された。

ブラックストーンのHP
http://www.blackstone.com/index.html

KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)、TPG(テキサス・パシフィック・グループ)、Bain Capital(ベイン・キャピタル)、Permira(ペルミラ)など、世界的なPrivate Equity Firmがここ1,2年の間に相次いで日本に上陸し、企業買収を虎視眈々と狙っていると報道されている。実際いくつかの案件が成立している。先行して日本市場に取り組んできた、Lone Star(ローンスター)、The Carlyle Group(カーライル)、Cerberus(サーベラス)などは、すでにエグジットしてかなりの収益を上げている。

全世界的なネットワークと数兆円の運用資金を持ち、企業を買収して数年保有し価値を上げて売却するというのが基本行動であるが、実は彼らの「意図」において、そのファンドとしての性格は大きく2つに分かれるように思われる。その鍵は「不動産」にある。企業を買収するように見えて、実はその企業が保有している不動産の価値を投資判断の中心をおいている、ということだ。

上記のブラックストーンも「手始めに、国内のホテルなど不動産投資を手がけ、その後は企業買収に関与する見通し」などと報道されているが、要は不動産という「安定した価値の源泉」を投資の軸にしていくということであり、同様の戦略はサーベラスにも顕著に見られるものである(サーベラスにおいては、国際興業や西武グループへの投資がそれにあたる)。

我々の会社においても、「優秀な経営者を、その人を必要とするフィールドへ」との理念のもと、お付き合いをさせていただいているファンドが数多くあるが、やはり経営力を必要とする投資案件というのは、その価値の源泉が不動産ではなく、その事業そのものの価値=キャッシュフローを生む仕組みが、人材、経営者の能力にある程度よらざるを得ない投資案件のほうが、取り組みやすく、また我々を信頼いただいている経営者候補の方々にもご案内しやすい。

ただ、不動産とはいっても、それは「ホテル」「商業施設」「流通業」「運輸業」など、一定の経営力を必要とするオペレーティング・アセットである場合も多く、その場合、投資の当初の意図は不動産価値による部分が大きかったかもしれないが、結果として経営者を必要としているという案件もまた存在する。不動産とはいっても、その価値は結局その上で活動するテナントの収益力に依存しているわけであり、その意味では、つきつめると人材にいきつくのだという見方も可能だろう。

何にせよ、固定化していたエクイティが流動化して、それにともなって、本来の価値を取り戻そうとしている事業や不動産が増えてきて、その中でそれを実現していくボトルネックが「経営」「人材」である、という大きな流れは当分止まることはないと思う。


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Author:渡辺健堂
1971年生 北海道出身 北海道大学法学部卒
卒業後、㈱日本長期信用銀行入行。コーポレートファイナンス業務、マーケット部門でミドルオフィス業務に従事。その後、ベンチャー企業を経て2000年にヘッドハンティング会社の設立に参画。2002年に同社代表取締役社長に就任。投資ファンドにおける投資先経営陣確保の重要性に着目、幅広い業界の経営者候補との強いパイプラインを築く。
2006年㈱エグゼクティブ・ボードの立上げに参画、主に金融の他、事業開発、事業企画などを得意とし、経営者発掘と投資ビジネスの融合を模索している。

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