2010年2月アーカイブ

理念の重要性とその定着や浸透の難しさ

エグゼクティブ・サーチの依頼を請ける際に、必ず企業の経営者や経営幹部と企業の短期的な方針や目標だけでなく、企業の根幹に関わる理念やビジョンについての説明に多くの時間を割いて頂くことをお願いしている。

当社がアクセスさせて頂くエグゼクティブ人材の多くは、自身の経験やスキルを最大限発揮することで、それに相応しい役割、権限や報酬を期待されている。
それと同様に、それ以上に企業の掲げる理念やビジョンに対する共感を第一条件に挙げる人が数多く存在する。

先日、A社の社員を対象にしたコンベンションにご招待頂き、多くの経営幹部や活躍されている社員の方のコメントを生で聞く機会があった。
創業以来、この企業は以下の3つの信条を掲げ、多くの国に事業を展開しているグローバル企業である。
①すべての人を尊重する。
②お客様の為に尽くす。
③常に最高を目指す。

また、外食事業を展開しているB社のK社長は大学卒業後、飲食の道に入り、失敗を繰り返しながらも、現在は複数の業態を立ち上げ、100億円規模の外食企業グループを経営している。お会いする度に「外食事業は教育事業」と口癖のように私に話して頂ける。お客様がいつも気持ちの良いお店や美味しい料理と感じて頂くには、従業員がお客様に心底喜んで頂くことを願っていないと実現できない。その為に、従業員の採用や教育には、多くの時間とエネルギーをかけてきた。

多くの経営者は、時代や社会の変化に影響されず、従業員や多くの顧客に共感される理念やビジョンを掲げ、その定着や浸透に努力している。
残念ながら多くの企業は、時間の経過や拙速な規模拡大(売上・エリア)及び経営者の迷いや豹変により、最も重要とされてきた理念やビジョンがないがしろにされ、
短期的な目標や目的で経営の意思決定が行われるようになってしまう。

エグゼクティブ・サーチの仕事は、幸いにもクライアント企業の経営者・経営人材と入口でダイレクトに意見交換できる立場にある。
企業を取り巻く環境は、国内外の競争が激化し、企業も個人も生き残ること自体が大変な世の中になってきている。だからこそ、企業と個人は本質的、根源的な意義や価値に対する同意の重要性を強く意識すべきであると考える。

先週末、20代で飲食事業を起業し、紆余曲折がありながらも日本を代表する飲食チェーンを成功させたA社長に、約10年振りにお会いした。思えば50歳で「日本の食文化をアメリカと中国で普及させる」と日本を飛び出されて数年が経つ。

私が30代でお会いした時に、「飲食事業は教育事業であり、従業員一人ひとりの躾から始まり、人間として社会人として商売人として時間をかけて育てることが、店創りや食品の味に現れる。だから決して手を抜くことは出来ない。」と教えて頂いた事を今も覚えている。

そのA社長が30年間大事に育てたブランド(会社・店舗・商品・社員)を、今後は積極的に海外に展開し、日本の食文化を世界中の多くの人達に伝えていく決心をしたとのこと。

現在は、ニューヨークとシンガポールに店舗を展開し、これからも積極的に出店していく予定。また、アメリカやアジアに加えてヨーロッパ展開も見据え、アムステルダムにも会社を設立したとのこと。

麺を中心とした飲食事業、レストラン事業、ベーカリー事業及び食材、食品の開発、製造、販売事業、飲食事業に関するコンサルティング事業が主な事業内容である。今後は日本食を代表するコンテンツを選択し、国内だけでなく海外に展開することで、日本の伝統や文化をグローバルなものにしたい、と熱く語られていた。

また、約30年オーナー経営者としてグループ企業を牽引してきたが、今後はこの会社や自分のDNAを正しく受継いだ若い後継者を社内や社外から抜擢して育成し、強い経営体制を創りあげたいとのこと。

弊社は、既に日本から世界に挑戦する小売流通分野の「衣」と「住」の優良企業の組織体制創りの支援をさせて頂いている。それに比較すると企業規模は小さいが、同様に高い志を持つ経営者が率いる「食」領域の日本企業のグローバル化を支援していきたい。

久し振りにお会いしたA社長が別れ際に言われた言葉が深く心に残った。
今まで30年間一生懸命に走り続けて、日本ではそれなりの成功を勝ち取った。
でも、このまま終わるのでは面白くない。
正直、これから世界で本気で勝負して成功するかどうかはわからないが、挑戦せずして諦めることはできない。それが自分の生き方だから…。



Author:竹内薫
1955年生 福岡県出身 78年立命館大学卒
研究開発型ベンチャーの設立に携わったのち、82年(株)リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。
人材紹介、エグゼクティブ・サーチ、教育研修事業部長、人事部長を歴任。
99年に㈱スピリッツ(人事・採用コンサルティング事業)を設立。
国内企業の成長を人事・採用面で支援する。
06年8月、経営人材に特化した人材サービス㈱エグゼクティブ・ボードを設立。
代表取締役に就任。
経営者及び経営人材の発掘と成長支援をライフワークとする。

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