2009年10月アーカイブ

会社を辞める時の個人差

エグゼクティブ・サーチ業界も、今までにないアゲインストの風が吹いている。
何年か前であれば、ご依頼頂く案件も多く、しかも30代の幹部候補クラスから即戦力の経営者、上場大手企業からベンチャー成長企業と幅広くそのポジションに相応しい人材を探すのに苦労したものだ。今は、その逆でエグゼクティブクラスを採用する企業は激減し、採用継続している企業の期待する人材レベルは極めてハイスペック且つピンポイントである。さらには経営幹部として活躍されている優秀な人材が会社の急速な業績悪化の為、上場中止、人員リストラ、吸収合併及び倒産の憂き目に会いその責任を取る為に会社を去るケースも決して少なくない。

A氏は、3年前に中堅不動産会社の取締役管理本部長としてスカウトされた。
当初は順調に業績を伸ばし、上場に向けた準備を進めていたが、リーマンショックにより環境が一変してしまった。
A氏は会社を存続させる為に会社規模を大幅に縮小することを提案し、取締役を辞任し現在は従業員として引継ぎ業務を行っている。
A氏をスカウトしたオーナー経営者は、A氏の管理本部長としての有能さだけでなく、人間としての誠実さ、信頼性、経営幹部としての立ち振る舞いを高く評価し、会社に留まり共に再起を果すことを望んでいるが、赤字企業において自分の人件費はあまりにも負担になると考え外に出る意思を固めている。

B氏は日本を代表するグローバル企業にて海外事業を長く経験し、その大半をアジアエリアのマーケティング、営業分野のエグゼクティブとして活躍していた。
40代前半で年功序列の大企業のマネジメントとして過ごすのではなく、リスクを取ってでも経営者としてチャレンジできる環境を選び転職し、数年が経過した。
転身後、最初の2年間は、ある企業グループの赤字子会社(売上数十億)へ社長として出向した。事業戦略を練り直し、経営資源の選択と集中、コスト構造の見直しと削減、人員再配置や削減を徹底し、V時回復を果たす。しかしその後、グループ内の別会社を統合し、その経営を担当した矢先に大不況が到来した。約3年をかけて事業再生の為に今まで以上の努力をするも、グループトップの判断もあり、やむなく事業閉鎖という結果となる。
B氏は最後まで会社の損失を最低限に止める努力や従業員の雇用確保に尽力した後、グループ本社への復帰の話を辞退して、その責任を取り、会社を離れる意思決定をした。

エグゼクティブ・サーチの仕事をしていると、A氏やB氏とは全く異なる判断、行動をする方も多く見かける。どちらが正しいとは敢えてここでは申し上げることはしない。
ただ、私自身は、経営という仕事は<小さな事から大きな事まで最終的にすべての意思決定を行い、そのすべての結果責任をとる仕事>と考える。
当社は、全面的にA氏とB氏に、次の<経営という仕事>を提供する努力をしていきたい。

この不況が育むもの!

国内大手企業の海外事業縮小や撤退、外資系企業の日本マーケットへの失望感、新事業投資の見送り等、経済環境の先行きが見えないことを理由に多くの国内、外資系企業は大幅な事業リストラクチャリングを推し進めている。
実際、エグゼクティブ・サーチを営む当社にも、数年前に海外の現地法人社長として就任したA氏が急遽、国内事業への異動を言い渡されたとか、外資系コンシューマ企業にCEOとして転職したばかりのB氏が、本社の外国人幹部にリプレイスされた等の連絡が増えている。

数年前に、縮小する日本マーケットだけに依存することなく、リスクは承知でグローバル(特にアジアエリア)に挑戦すると勢い勇んでいた日本企業や、世界2位のGDPを誇る日本マーケットの潜在能力に期待して進出した欧米グローバル企業の余りにも早い変わり身に多くの人材が振り回されている。

それだけではない。大手商社や戦略コンサルティング会社出身の30代や40代のビジネスパーソンも、ベンチャー成長企業やファンド支援先に事業開発や事業企画、経営企画等の経営幹部として数多く転身したが、今回の不況で財務体力のないベンチャーは淘汰され、ファンド案件も早い見切りで整理されている。
ここまでの話を聞くと、多くのビジネスパーソンが住み慣れた日本という国や今まで慣れ親しんだ企業を離れ、海外や国内で経営という仕事を任され志半ばでその立場を追われているという悲劇にしか思えないかもしれない。

しかし、彼らの多くは言う。自分の意思で社外や国外に飛び出し、今までの自分の甘さを痛感し、生き残る為に自ら考え行動し、多くの成功や失敗も経験したことは決して無駄にならない。
あのまま環境を変えることを恐れ、時間の経過に身を任せる人生を考えると、結果としてどちらが良かったかは疑問だとも!

私は危機や困難が人を育てると言う事に期待したい。
会社に残る、転職する、起業する、ではない。
人間が本気になったら、かなりの事が実現できるということを、この仕事を通じて知り合った人のその後の人生を見て知っている。
また、一人一人が心身共に健康で健全に生きられる(旬の時間)は、それほど長くはないということも肝に銘じておきたい。
中川元財務大臣の急死のニュースを聞いて改めてそう感じる!


Author:竹内薫
1955年生 福岡県出身 78年立命館大学卒
研究開発型ベンチャーの設立に携わったのち、82年(株)リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。
人材紹介、エグゼクティブ・サーチ、教育研修事業部長、人事部長を歴任。
99年に㈱スピリッツ(人事・採用コンサルティング事業)を設立。
国内企業の成長を人事・採用面で支援する。
06年8月、経営人材に特化した人材サービス㈱エグゼクティブ・ボードを設立。
代表取締役に就任。
経営者及び経営人材の発掘と成長支援をライフワークとする。

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